この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
陽炎ーカゲロウー
第11章 散
戸板に乗せられた市九郎は、揺られて更に血が流れたのだろう。既に意識が朦朧としていた。
しつらえられた床の上に市九郎をおろすと、手下の者たちは出ていく。
「赤猫殿、水を。」
赤猫が柄杓に水を汲んでくると、兵衛は引き出しの中から一つの包みを選び、中の丸薬を市九郎の口に放り込む。
市九郎の体がびくりと震える。
「案ずるな。気付薬じゃ。赤猫殿。水を飲ませて下され。」
赤猫は、柄杓を市九郎の口元に持っていこうとしたが、思い直し、水を口に含んで口移しで飲ませた。
身体がビクビクと痙攣し、市九郎の目に光が戻る。
「市九郎!!」
赤猫が呼びかけると、市九郎は僅かに頬を歪ませた。
「下手、うっちまったな…」
「市九郎殿、夜中ですでの。声が響いては困る」
兵衛は市九郎に猿ぐつわを噛ませた。
「痛みまするぞ。」
市九郎の着物を開くと、下帯まで血に染まっていた。
そのまま、甕の柄杓で焼酎を掬い、傷口にかける。
「ぐぉっ!!」
猿ぐつわのおかげで、声はそれほど響かなかったが、市九郎の目は血走り、大きく身体を仰け反らせる。
焼酎は血と混じって赤くなり、敷布を見る間に染めていく。
兵衛は気にせず、焼酎を数杯かけた。
その度に、市九郎の身体がビクンビクンと跳ね上がった。
布で傷口を抑えながら、
「八尋、紙を。」
八尋が蝋を塗った紙を、市九郎の脇腹に当てる。
「それは…?」
赤猫が尋ねると
「こんなもので蓋ができるかはわからん。ただ、布だけじゃとどんどん血が染み出してくるでの。ただの思い付きよ。期待はせんで下され。」
その上からきつく布を巻きつける。
「反れたようじゃの。鉛玉は残っておらんわ。ただ、肉を持っていかれとるし、何より血をだいぶん失うておる。儂に出来るのはここまでよ。後は市九郎殿次第じゃ。」
市九郎の猿ぐつわを外し、
「何かあっても困るし、今宵は儂等もこのあたりで休ませてもらえんかの」
「猫ちゃん、どうする?市サンと二人になりたい…?」
赤猫はかぶりを振った。
しつらえられた床の上に市九郎をおろすと、手下の者たちは出ていく。
「赤猫殿、水を。」
赤猫が柄杓に水を汲んでくると、兵衛は引き出しの中から一つの包みを選び、中の丸薬を市九郎の口に放り込む。
市九郎の体がびくりと震える。
「案ずるな。気付薬じゃ。赤猫殿。水を飲ませて下され。」
赤猫は、柄杓を市九郎の口元に持っていこうとしたが、思い直し、水を口に含んで口移しで飲ませた。
身体がビクビクと痙攣し、市九郎の目に光が戻る。
「市九郎!!」
赤猫が呼びかけると、市九郎は僅かに頬を歪ませた。
「下手、うっちまったな…」
「市九郎殿、夜中ですでの。声が響いては困る」
兵衛は市九郎に猿ぐつわを噛ませた。
「痛みまするぞ。」
市九郎の着物を開くと、下帯まで血に染まっていた。
そのまま、甕の柄杓で焼酎を掬い、傷口にかける。
「ぐぉっ!!」
猿ぐつわのおかげで、声はそれほど響かなかったが、市九郎の目は血走り、大きく身体を仰け反らせる。
焼酎は血と混じって赤くなり、敷布を見る間に染めていく。
兵衛は気にせず、焼酎を数杯かけた。
その度に、市九郎の身体がビクンビクンと跳ね上がった。
布で傷口を抑えながら、
「八尋、紙を。」
八尋が蝋を塗った紙を、市九郎の脇腹に当てる。
「それは…?」
赤猫が尋ねると
「こんなもので蓋ができるかはわからん。ただ、布だけじゃとどんどん血が染み出してくるでの。ただの思い付きよ。期待はせんで下され。」
その上からきつく布を巻きつける。
「反れたようじゃの。鉛玉は残っておらんわ。ただ、肉を持っていかれとるし、何より血をだいぶん失うておる。儂に出来るのはここまでよ。後は市九郎殿次第じゃ。」
市九郎の猿ぐつわを外し、
「何かあっても困るし、今宵は儂等もこのあたりで休ませてもらえんかの」
「猫ちゃん、どうする?市サンと二人になりたい…?」
赤猫はかぶりを振った。