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陽炎ーカゲロウー
第11章 散
「やっぱり、か…」
鷺が、ポツリと呟く。
「また、勘が当たったの…」
兵衛が、居た堪れぬ様子で鷺の肩に手を置いた。
「…あんた、ずっとそんな事気にしてたのか…?馬鹿だね本当に…!あんたは、もっと大きなモノを私にくれたじゃないか…!」
赤猫の目から涙が途切れることはなく。
もう、握り返されることのない市九郎の大きな手を濡らす。
「頭領っ…!」
八尋も、その美しい顔を幾筋もの涙で濡らし、震えている。
鷺も、兵衛も。
言葉もなく、拳を握って歯をくいしばっていた。