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陽炎ーカゲロウー
第11章 散
「さて、これからのことなんだけど。」
鷺が一つ区切りをつけた、という様子で投げかける。
「潮時じゃろうの。」
兵衛の言葉に、鷺が頷く。
「潮時、って…?」
赤猫が眉を顰める。
「もともと我らは市九郎殿に抱えられた厄介者よ。」
「市サン亡き今、俺らがこの形に固執するのはおかしいってこと。解散、でいいんじゃない?」
「他のみんなはどうなるの?」
「放っときゃいいよ。わざわざ解散なんて言わなくてもさ。俺らの作戦と市サンの指揮がなきゃ、ただのならず者の集まりだからね。
フツーの盗賊になって捕まるなり、なんなり、自然と淘汰されていくでしょ。その中で、二代目三代目の、秀れた頭が出てくるかもしれない。でも、それは俺らとは関係ない。俺らの陽炎は、ここで消える。」
「形はあれど実体はなし、か。まさに陽炎じゃの。」
「上手いこと言うねぇ」
鷺と兵衛が顔を見合わせ、笑う。