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氷解
第1章 氷解
黙り込む陽菜子に周防は悔しげな顔で言った。

「貴女を子供扱いにしたから、嫌われていたわけですね。
そしてあの男が良いと……婚約者の為に貞操も守れないほど、あの男が良いということですか」

「え……?あ……ちがっ」

やつあたりした自分が吐いた嘘の言葉を、周防が陽菜子の本心だと勘違いしている。
それにやっと気づいた陽菜子は焦った。


違う……私はホントは子供で。あれは嘘だったのだと、そう言う前にーーー周防は氷のような瞳を更に冷たくして、陽菜子を見下げるように嘲笑った。

「ならば……陽菜子お嬢様。大人の女であるというのを見せて頂きましょう」

氷の瞳の奥に見えるのは、揺らめく焔。
それは、まるで青白い蜃気楼だ。

「どうやって、男を垂らしこんだのか、はしたないお嬢様の姿を見せてもらいましょう」

「え……?」

周防の静かな声に怒りが含まれていたのだが、陽菜子は気づいていなかった。

周防の部屋に連れていかれた陽菜子。


小さな楕円テーブルと対局に置かれていた椅子の一つに、周防が座る。

陽菜子に向かいに座れと、促した周防に従って、陽菜子は椅子の前に立ったのだが……

「さぁ、私を誘惑してごらんなさい」

ーーーと。
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