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氷解
第1章 氷解
「少しは懐いてくれるようになりましたよ」

フッと柔らかい声で話す周防。

『少しか……。じゃあ、貴文くんと陽菜子の婚約はまだまだだな』

ーーー婚約?

え? どういう事?


父の声に、私はパチリと目を開けた。

ガバっと身体を起こして、周防を見る。


シっと指をたてる周防、私の寝ていたベットに腰掛けていた。

いつものように眼鏡を掛けている周防の瞳ーー冷たい氷のような瞳で。

また、いつもの周防だーーーっ、と怯えると、周防は人差し指でそっと私の頬を撫でた。

そして電話の相手ーーー父に、周防は静かな声で言う。



「さぁ……どうでしょうか? 私と陽菜子お嬢様の婚約は、意外に早いかもしれませんよ」

『え? どういう事だ……まさか……』

「今、取り込み中なので、また追ってご連絡を致します」

と言って、周防はスマホの通話を強制終了させると、スマホを床に投げた。

「す、周防……? どういうこと?」


「お嬢様はまだ、お綺麗な身体でございます」

「え?」

周防の氷のような冷たい瞳は、もう氷ではなかった。
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