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それでも・・愛してる
第12章 私に足りないもの・・
ここで働き始めて、結婚にかかわる客を相手にしだしてから、
今までと同じ言葉を相手に返しても、その後に空虚感が垂れ込める。
そう、どんよりと灰色がかった雨雲みたいな。
仕事中にもかかわらず、まだ雨雲は居座ったまま。
私は懸命に営業スマイルを作り出した。
「なんですかねぇ、縁がないっていうか。まあそのうち考えようかな、なんて
気楽にかまえてます。もらってくれる人がいれば、ですけどね」
「誰かって、彼氏がいるでしょうが!」
目を細めて彼が言うと、彼女も隣で頷く。
2人の顔から、自然と視線ははずれていく。
・・彼氏なんかいないのに・・
・・私に彼氏がいないとは思わないの?・・
・・じつは彼氏いませんなんて言えない・・
「そうだといいんですけどねぇ」
適当に話を合わせることが、こんなにつらいと思ったことはない。
早くこの話題から逃れたくて、次の物件の案内へと話を進めた。