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世界は灰色で、君は虹色で
第1章 世界は灰色で、君は虹色で
「優奈っ!」

 そう声が聞こえたかと思うと、温かいものに包まれた。

「彰人?」

「ばかっ! 心配するやろ? 自分のこと大事にしろってあれほど……」

「セフレのくせに」

「はいはい、せやな。でも、気づいてないかも知れないけど、俺はそんな風に思ったことないからな。優奈だってホントはそうやろ?」

 彰人の優しく宥めるような言い方に、言葉に子供みたいに泣きじゃくった。懐かしい感覚。今まで強がって甘えようなんてしなかった。だけど、彰人の前では無意識に甘えていたのかもしれない。今は素直に彰人に委ねられる。

「本当はっ……初めて会ったときからっ」

「彰人のことが好きやった」

「優奈のことが好きやった」

 お互いの言葉が重なる。二文字の言葉を本当に心から初めて言った瞬間。彰人の気持ちも本当は昔から知っていたような、そんな気がする。

「ありがとう。私のこと見捨てないでいつも支えてくれていて」

「俺こそありがとう。やっと本当の気持ちを言ってくれて」

 彰人は私から離れると私の唇にキスをした。

「これが俺らのファーストキスで」

「せやね。ていうか、彰人、汗かきすぎ」

「しゃーねーじゃん。チャリぶっ飛ばして来たんやから」

「せやね。ごめんっ」

「やっぱり優奈は笑顔が一番やね」

 彰人は笑って、それにつられて私も笑って、幸せってこういうことを言うんだなって初めて知った。

「ありがとっ。彰人と出会えて良かった。これからは自分の気持ちに嘘つかないよ。素直になるからね」

「それが一番。ほら、これでも飲みぃや。冷えたし、喉渇いたやろ?」

 彰人は私にコーンポタージュを差し出した。開けて、飲む。喉を通る温かさが心地よい。

「今日はもう俺の家に泊まってけや」

「そうする。もう最終電車行っちゃったやろうしね」

 コーンポタージュを飲み終えてから、自転車の後ろに乗って彰人の家に行った。
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