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恋はどこからやってくる?
第1章 出会いは深夜
ぼんやりと女の去った出入口を見つめていた男は、「いま気づいた」というように柏木を振り返り、曖昧な笑みを浮かべた。

「すみません。お騒がせしてしまって…」

そう言うと、手のひらで顔をごしごしと擦る。
白茶けた頬にほんのりと赤みが差したが、表情は冴えないままだ。

「ケンカ?」

と問うと、また曖昧に微笑んだ。

「いや…終わり、みたいです」

エレベーターに飛び乗った彼女を追いかけ、恐らく…階段を五階分駆け降りてくるほどの未練と情熱を持っていただろう事と、他人事のように投げやりな返答にちぐはぐな印象がする。

「ふぅん」

──フラれ男がふたりか。おかしな夜だな

「で、乗るの?」

昇降ボタンを押すと止まったままだったエレベーターがゴトンと開き、柏木は片足を箱に乗せて振り向いた。


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