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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第7章 時流れの向こうには【詩】
かつて私が中学・高校と過ごした勉強部屋の傍ら
一本の花梨が佇んでいる
この時期にはピンク色の可憐な花をたくさんつけ
眼を楽しませてくれる
高校生の頃
私は時間が自分の側を轟々と音を立てて
大河のように流れていくのを感じた
何故 あんな風に感じたのかは判らないが
その頃から
自分の中には常に二人の私がいて
ひとりの私がもう一方の自分を冷めた瞳で見つめている
そんな気がすることがよくあった
時間の流れを肌で感じたのも恐らくは
似たようなものだったのかもしれない
十六歳の私は勉強部屋の窓を開けて
よく花梨の花を眺めていた
あの頃 今の自分の姿なんて想像もつかず
また 二年後に見舞うであろう父の哀しい死さえ
予測できるはずもなかった
人がもし自分の未来を知ることができたとしても
良いことばかりではないだろう
父だって 自分が二年後に事故で亡くなってしまうと知れば
翌日からは生きる気力を失っていたかもしれない
判らないからこそ 未来に儚い希望を抱いて
人は生きてるいけるのだ
思えば十六歳だった私は
果てしなく流れていく時の流れの向こうには
何が待ち受けているのか知りもせず
未来にひたすら明るい夢を描いていた
今では時間の流れを感じるきっかけは
我が子の成長であったり
こんな風に花梨の花が咲いたりする自然のうつろいだったりする
十六歳のときのように時間を抽象的に感じることはない
お父さん
あなたがいなくなってから三十年近くがたっても
花梨はまた愛らしい花を今年も咲かせています
あの頃 高校生だった私は
いつしか あなたが亡くなった年の方が近くなりました
一本の花梨が佇んでいる
この時期にはピンク色の可憐な花をたくさんつけ
眼を楽しませてくれる
高校生の頃
私は時間が自分の側を轟々と音を立てて
大河のように流れていくのを感じた
何故 あんな風に感じたのかは判らないが
その頃から
自分の中には常に二人の私がいて
ひとりの私がもう一方の自分を冷めた瞳で見つめている
そんな気がすることがよくあった
時間の流れを肌で感じたのも恐らくは
似たようなものだったのかもしれない
十六歳の私は勉強部屋の窓を開けて
よく花梨の花を眺めていた
あの頃 今の自分の姿なんて想像もつかず
また 二年後に見舞うであろう父の哀しい死さえ
予測できるはずもなかった
人がもし自分の未来を知ることができたとしても
良いことばかりではないだろう
父だって 自分が二年後に事故で亡くなってしまうと知れば
翌日からは生きる気力を失っていたかもしれない
判らないからこそ 未来に儚い希望を抱いて
人は生きてるいけるのだ
思えば十六歳だった私は
果てしなく流れていく時の流れの向こうには
何が待ち受けているのか知りもせず
未来にひたすら明るい夢を描いていた
今では時間の流れを感じるきっかけは
我が子の成長であったり
こんな風に花梨の花が咲いたりする自然のうつろいだったりする
十六歳のときのように時間を抽象的に感じることはない
お父さん
あなたがいなくなってから三十年近くがたっても
花梨はまた愛らしい花を今年も咲かせています
あの頃 高校生だった私は
いつしか あなたが亡くなった年の方が近くなりました