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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第11章 さようならも言わずに(随筆)
すぐにタクシーで岡山の病院に駆けつけると、

 父はその時、既に意識不明の重体で、医師からは

 非常に重篤な状態ですと、深刻な顔で告げられました。

 とりあえず、入院ということで病室に移動しましたが、父はもちろん

 横たわったままで呼吸器をつけています。

 話では、頭部の損傷が激しいという痛ましい状態になってしまっていました。

 そして、それから17日後、一時は持ち直すかに見えたのに、

 父はついに力尽きて息を引き取りました。

 それが27日の真夜中でした。

 病院で亡くなったご家族を迎えにいかれた方はお判りになるかと思いますが、

 亡くなった人と無言の帰宅をするのは哀しいものです。

 深夜、寝台車に乗った父と私や母は病院から家まで帰りました。

 お世話になった医師や看護婦さんたちが黙礼して見送ってくれました。

 まるで永遠に開けることのない闇の中を車が走っているような気がしたものです。

 
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