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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第15章 ヒーローも板挟みには悩まされる!?
実は、市中見回りに出た忠吾と平蔵を襲ったのは、以前、平蔵がお縄にした

 盗賊の残党。そのときの盗賊の親分を平蔵は斬り殺しています。

 なあ、俺を憎んでる連中は、この世にどれくらいいるんだろうな。

 悪を裁かねば、民に恨まれ、悪を裁けば、また悪に恨まれる。

 親分を殺された残党の報復だと知り、平蔵が手下の与力にしみじみと述懐した

 科白です。

 平蔵は民のために悪を憎み、盗人を野放しにしてはおけないと日々、

 苛酷なお勤めに励んでいるのですが、盗人から見れば、単に自分らを破滅に

 追いやる憎らしい鬼平でしかない。

 また、無辜の民のために、民が盗人の毒牙にかからないようにと盗賊の探索や捕縛に

 血眼にもなっている。

 民の安全のためにやっている仕事ですが、結局は回り回って、盗人からの恨みを

 買う立場になる。

 平蔵のやりきれない本音が見えるヒトコマでした。

 人の上に立つ立場というのは難しいだろうと思います。

 なぜなら、すべての人が満足できるように事をおさめなければならないからです。

 しかし、現実には、それは不可能に近い。

 諺ではないけれど、アチラを立てれば、こちらが立たず。

 その逆もしかりです。

 自分がどれだけ誠意を尽くしても、必ず不満を抱く人はどこかにいる。

 それが政治であり、大勢の人の上に立つ立場の哀しいところでしょう。

 屈託ない笑顔の似合う鬼平にの中にある孤独と懊悩、

 まさに盗賊改め方という江戸の治安を預かる立場ならではのように思われました。 


(2014/01/03のブログより転載)
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