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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第19章 他人と争わず、自分を貫いて生きる男の物語~映画 雨あがる~
一方、殿様は帰ってきた使者から妻の言葉を聞き、自分が間違っていたことに

 気づき、慌てて自ら男を呼び戻して仕官させるべく迎えにいきます。

 殿様自らが馬を飛ばして迎えにきているとも知らない夫婦は、

 宿を出て、のんぴりと再び旅に出ました。

 立派な腕を持ちながら、花を咲かせられぬ、

 何という妙な巡り合わせでしょう。

 でも、私、構いませぬ。

 人をおしのけず、人の席を奪わず、貧しい人たちに喜びを与えなさる、

 このままのあなたも立派ですもの。

 ラストの妻のひとりごとが印象的でした。

 この作品は当初、見終わった後、晴れ晴れとした気持ちになるような

 作品を創りたいと願ってつくられたものだそうです。

 脚本はかの有名な黒澤明監督、これをとった監督が

 亡き黒沢監督に捧げると語っています。

 他人を蹴落とすことをせず、あい争うことも好まず、

 いつもにこにこと笑って穏やかな物腰の夫の良さを最もよく理解している

 のが彼の妻でした。

 殿様は言います。

 優しさは時に人を傷つけることもある。あの者に負けた予をあの者が気遣うた時、

 わしは何かバカにされたようで無性に腹が立った。

 あの者が今まで、仕官に失敗してきたのは、そのせいだろう。

 どんな逸材もその器を理解できる人に巡り会わなければ、

 その本領を発揮できないのでしょう。

 映画では、男が仕官するところまでは描かれませんでしたが、

 きっと今度こそ彼を理解する主君に出逢えて、仕官はうまく叶ったと信じたい。

 どうも長いばかりで、とりとめもない内容になってしまいましたが、

 周囲を気遣いながらも自分というものを失わず、真っすぐに生きる侍と

 彼を理解しようとする妻の姿に、何か心洗われるような気がしました。

 


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