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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第20章 憎しみより優しさの倍返しを~時代劇 花よりもなほ を見て~
しかし、彼があだ討ちをためらう理由は他にあった。

 既に新しい妻を娶り、子までなしている相手の男を本当に私怨で殺してしまって

 良いものか。

 そういう迷いが余計に彼を消極的にさせていました。

 この映画は人として生きる上でとても大切なことを私たちに教えてくれます。

 人を憎んで仇の生命を奪い復讐を遂げるよりも、

 大きな心で赦して受け容れた時、彼は真の意味でのあだ討ちを成し遂げたの

 だといえます。

 何も相手を殺すだけが復讐ではない。

 父を殺した殺人犯を赦したことで、彼は既にその敵をはるから凌ぐ

 大きな器の人間になったのだから。

 それにしても、何という奇妙な巡り合わせでしょうか。

 宗左が仇として討ち果たそうとしていた男の元妻が

 宗左の好きになった女性だとは。

 こういう縁を因縁と呼ぶのでしょうか。

 おさえが宗左に言った言葉が印象的です。

 お父上が宗左さまに残されたものが他人を恨むこと、憎しみだけたとしたら、

 哀しすぎます

 そして、あだ討ちをついに断念した宗左を皆が意気地なし、弱虫だとののしった時、

 それは違います、宗左さまは糞を餅に変えられたのです。

 汚い話で申し訳ありません。

 これは昔、長屋の共同トイレからくみ上げた肥えを集めて業者に売り、

 お金に換えて正月の餅を買ったことから、

 おさえはそう言ったのです。
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