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催眠玩具
第12章 二律背反
駐車場から昇降口までは、一旦校門近くの守衛室を通らなければならなかった。
不審者の侵入にうるさい昨今では、何食わぬ顔で通り抜けるというわけにはいかないようで、外来者はそこで指名や用件などを書き込まされる。
訪問理由は予め考えてあった。
「……落としたお財布を拾ってくれた生徒さんにお礼がしたくて」
ちゃんとした格好をしていれば、それぐらいの説明でも簡単に信用してもらえるものだ。定年退職後のアルバイトらしき年配の守衛さんは、親切にも内線で教務主任の先生に連絡までとってくれた。
教えられた職員室へと向かう途中で、午後の一限目の終鈴と思われるベルが鳴った。一斉に椅子を引く音が校舎中に響き渡り、私を懐かしい気持ちにさせる。
この物音ともずいぶん久しいな……。
と、学生時代に気分を引き戻される。
あの頃、亜理紗とよく将来の夢を語り合ったものだ。
彼女は起業家、私はフリージャーナリスト。
この世界にどこまで自分の力が通じるのか試してみたい。その想いは大人になって今、どちらも叶えられ……そして、変わらず私たちはライバルであり、親友で。だから……
……亜理紗を放っておけない。