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催眠玩具
第13章 インサート ― 挿入 ―

 高城が私のほうに向きなおる。

「さあ、キミはこれから由美になる……キミは由美だ」

 そう。由美……私は由美。

「そして、今、キミを押さえつけているのは亜理紗……」

 高城に襲われて、なんとか反撃しようと考える。
 亜理紗をふりほどかなくてはならない。叫び声すら上げられない。

 腕は……動く……動かせる。

 由美のバッグにはスタンガンが入っている。アメリカで買ったのだと先日教えてくれた……子供だましの玩具なんかではない、大人の男でも一撃で撃退できるのだと――なんとかそれを掴むのだ……手を伸ばして……あと少しで……届く。

 手をのばすのは由美のバッグだ。
「私」のバッグではない……気をつけて。

「私」という意識で手に取ろうとすれば、無意識が働いて亜理紗のバッグを手にしかねない。

「由美……キミは由美だ……」

 高城の呟く声が私の意識を支配し始めた。
 もうこれで、私は亜理紗としての意識を保てなくなるだろう。

 最後に、由美に目をやる。
 私になった由美。

「……本当にごめんなさい」

 私はもう一度由美に謝った。










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