この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
催眠玩具
第15章 愛する玩具
いっぱい、いっぱい遊んだね。
僕とお姉ちゃんで、玩具を使って遊んだね。
そしてあの日はやって来たんだ。
大人たちが、僕からお姉ちゃんと玩具を一度に取り上げたあの日。
みんながお姉ちゃんのことを悪いお姉ちゃんだと言って。
僕はもうお姉ちゃんに会えなくなったと知った。
お姉ちゃんを取り上げられて僕の心は空っぽになった。
だって、僕の心の中はお姉ちゃんでいっぱいだったから。
僕の空っぽの心は泣き方を知らなかった。
代わりに泣いてくれる玩具も見つからなくて。
僕の空っぽの心は怒り方も知らなかった。
代わりに怒ってくれる玩具も見つからなくて。
どこに行ったの、僕の玩具箱。
お姉ちゃんの素敵な玩具箱といっしょに、どこに奪われてしまったの?
ねえ、亜理紗お姉ちゃん、知ってる?
それから僕は色々なことを憶えたんだ。
笑わせ方、怒らせ方、泣かせ方……。
僕は自分でできないから、誰か他の人にそれをやって貰うやり方を憶えたの。
お姉ちゃんが僕にそうしていたように。
僕もお姉ちゃんにそうしたように。
二人でいつもしていたように。
そうして僕は大人になるのを待っている。
いつかお姉ちゃんにまた会える日を。
お姉ちゃんが僕を迎えに来てくれた時、また二人で遊べるように、玩具を集めて待っている。