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催眠玩具
第1章 プロローグ
「ゃ……」
かすかな声。
「やめ……て……くだ……さ……」
ラッシュアワーの通勤客で満員の車内。
人いきれと走行の騒音に埋もれるその声に気づく者はいない。
声の主はブレザーを着た高校生の男子だった。
美男子――いや、美少年という言葉がふさわしいだろう。透き通るような白い肌と、少女かと見紛う線の細い造作の顔立ち。それが、恥ずかしさと、体の奥底から引き出される情動に耐えてわなないていた。
頬は上気してうっすらと桜色に染まっており、苦しげに寄せられた眉の下で、震える瞼と睫毛が潤む瞳を伏し隠す。
少年は、向かい合う女に体を密着されていた。
見た目は20代半ば。
落ち着いた色のスーツ、目立ちすぎないアクセサリー、そして必要最低限の薄化粧。
装いだけ見れば、どこにでもいる出勤スタイルの女だ。
そんな女が、妖艶な微笑を浮かべて少年の体をまさぐっていた。