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催眠玩具
第6章 夢の叶う時

 私は何を……。

 誘うつもり?

 言葉より遅れてそんな考えが追いつく。
 でもすぐにそれを否定した。

 きっと、心細くなっているだけ。
 あの夢のせいで。

 このままもう一度眠りにつく前に、誰かと一緒に過ごしたい。
 そうしないとまたあの非現実の世界へと迷い込んでしまいそうで……。

 それだけだ。
 これは下心なんかじゃ……。

 そうやって色々と理屈探しに忙しかったのは私の頭の中だけで、高城さんの反応は至極当たり前のものだった。

「えっ……? いや、でも遅いですし……具合が悪かったなら少し休んだほうが……」

 駄目だ。
 帰しては駄目。

 もうそれ以外考えられない。
 私は必死になった。

「ううん、体調はもういいの……本当に! 一日寝て、今、起きた所で……それに……休んでしまったから今日一日の事も聞いておきたいし」

 そう言って私は、返事も待たずにエントランスのドアを開けるボタンを押した。

「わかりました……でも、すぐにお暇しますからね!」

 開いた自動扉を前に、入ったものかと一瞬戸惑いを見せたものの、高城さんはすぐに優しい顔でカメラを見上げてくれた。

 彼がエントランスホールを映すカメラの範囲から外に出ると、私は急いで身支度を整えた。寝室にとって返し散乱したままの玩具を片付けてドアを閉める。

 部屋の呼び鈴が鳴る頃には、もうあの夢のことなど跡形なく頭から消え去っていた。

 私には紅茶。彼にはコーヒー。

 淹れかけの飲み物を後に、私は高城さんの為に玄関のドアを開けに向かった。
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