この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
催眠玩具
第6章 夢の叶う時
私は何を……。
誘うつもり?
言葉より遅れてそんな考えが追いつく。
でもすぐにそれを否定した。
きっと、心細くなっているだけ。
あの夢のせいで。
このままもう一度眠りにつく前に、誰かと一緒に過ごしたい。
そうしないとまたあの非現実の世界へと迷い込んでしまいそうで……。
それだけだ。
これは下心なんかじゃ……。
そうやって色々と理屈探しに忙しかったのは私の頭の中だけで、高城さんの反応は至極当たり前のものだった。
「えっ……? いや、でも遅いですし……具合が悪かったなら少し休んだほうが……」
駄目だ。
帰しては駄目。
もうそれ以外考えられない。
私は必死になった。
「ううん、体調はもういいの……本当に! 一日寝て、今、起きた所で……それに……休んでしまったから今日一日の事も聞いておきたいし」
そう言って私は、返事も待たずにエントランスのドアを開けるボタンを押した。
「わかりました……でも、すぐにお暇しますからね!」
開いた自動扉を前に、入ったものかと一瞬戸惑いを見せたものの、高城さんはすぐに優しい顔でカメラを見上げてくれた。
彼がエントランスホールを映すカメラの範囲から外に出ると、私は急いで身支度を整えた。寝室にとって返し散乱したままの玩具を片付けてドアを閉める。
部屋の呼び鈴が鳴る頃には、もうあの夢のことなど跡形なく頭から消え去っていた。
私には紅茶。彼にはコーヒー。
淹れかけの飲み物を後に、私は高城さんの為に玄関のドアを開けに向かった。