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催眠玩具
第6章 夢の叶う時
「どうしたんですか……? 何度も連絡したのに返事がないから心配したんですよ」
ああ、高城さん……高城さん……。
みるみるうちに私の中で日常が姿を取り戻してゆく。
灰色の悪夢の世界から、いつもの変わりない現実へ。
あの夢はそれぐらい恐怖の爪痕を私に残していたのだ。
でも、もう大丈夫だ。
インターフォンのカメラ画面の中の高城さんの姿は、いつも以上に心強かった。
「……亜理紗さん?」
安堵のあまり返事をするのを忘れていた私は、慌てて気を取り直す。
「あ……ごめんなさい……ええと、私……体調が悪くて……起きられなかったみたい」
「ええっ? それはよほど具合が悪いんじゃ……大丈夫なんですか?」
「ええ……うん、大丈夫……明日はちゃんと出社するわ」
「病院には行きました? もしまだなら……車で来ていますから連れて行きましょうか?」
「大丈夫! 本当にもう大丈夫だから……あ、でも……」
そこで一瞬言いよどんだのは、ふと口を衝いて出そうになった言葉に、下心があるように感じたからだった。
でも、それについてどうこう考えるより先に私は受話器の向こうの高城さんに告げていた。
「……あの、少し……部屋まで上がりませんか?」