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催眠玩具
第7章 新しい人生
「亜理紗さんが休むなんて初めての事じゃないですか?」
努めて明るい口調で高城さんが言う。
居間に通した彼にソファをすすめ、私はキッチンから飲み物を運ぶと斜め向かいの位置に座ってカップを彼の前に置く。
「どうも……」
礼を言ってコーヒーをひと口すすり、高城さんはひと心地ついたというように、辺りを見回した。
「初めて、と言えば……亜理紗さんの家にお邪魔するのもそうだね」
ふ……と目元を緩ませて私に微笑みかける。
私の好きな表情。
心が安らぐ。何があっても大丈夫だという気にさせくれる暖かな眼差し。
「そうね……」
相槌を打ちつつ、でも……その言葉に私の胸は少しだけ痛んだ。
「亜理紗さん」と、そう彼が私のことを呼ぶようになって、アート・トリルに来てくれて……もう何年も経つというのに。あのときは距離が縮まったと感じたというのに。私はどうしてこんなにぐすぐすしていたのだろう。
仕事が忙しかった?
それもある。
けれど、私のせいだけでもないのだ。