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催眠玩具
第7章 新しい人生
「ああ……亜理紗のキス……嬉しい……早く……僕に……」
高城さんはうわごとのように囁かれた暗示を繰り返し、目の前の私を熱く見つめる。
「……やめてっ!」
もう何度目になるだろう。
私は少年に向かって叫んだ。
彼に慈悲の心などあるはずがないと、とっくにわかっていたのに。
「キスを許可するよ……亜理紗」
「ああっ……嫌っ!」
体が……勝手に……。
いいえ、これは私の意思……?
高城さん……欲しかった……ずっと……高城さんの事が……私。
「好き……」
「僕もだよ、亜理紗……」
お互いに迎え合うようにして。
目を閉じて、そっと。
睫毛と睫毛……それから私たちは唇と唇を触れ合わせた。
暗示のウィルスが高城さんを蝕んでゆく。
ゆっくりとした舌の絡み合いの中で、感覚的にそれがわかった。
口移しで犯す。
彼が私のものになる。
健全だった彼の精神を。快活さをふりまく柔らかな信念を。
爛れた情欲を秘めた魔獣の心に――。
私がこの唇で、貪欲に舐め求めるこの愛肉で、したたる唾液で。
嚥下させ、奥の奥から作り変える。
ああ……。
止まらない涙も哀しさも、なんの言い訳にもならない。
彼の唇の震えに、舌のわななきに、私は母性をすら込み上げさせて、悦び、祝福していた。
これで彼も私と同じ。
あの少年の催眠玩具。
弄ばれて、それが生きがいとなる破滅の人形。
……それは、なんという素晴らしい人生なんだろう。
私の心はぐちゃぐちゃになった。
そのとき手の中で爆ぜた粘つく熱い何かのように。