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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
兵衛は呆れた、と言う様子で溜め息を吐いた。
「わざわざ訪ねてきて何かと思えば。金の無心か。生憎だが、金など儂も持っておらんわ。」
「着物の襟に仕込んだ虎の子。どうせあんたの事だから使ってねぇんだろ?それを貸してよ。」
「何故知っておる⁉︎」
兵衛が驚く。
「前に着物に触った時に、硬かったから。なんか仕込んでると思った。大きさからして両判かな、と思ってさ。首の後ろ。左右の前襟と、あとは帯?四、五枚あんだろ?一枚貸してくれてもいいじゃん。」
「何処まで知っておるのだ…」
兵衛が明らかに警戒する。
「なんだ図星かよ。俺が知ってるのは首の後ろだけだよ。脱がした訳でもないのに、前襟やら帯の事なんか知らねぇよ。両判隠せるトコなんか限られるし、あんたのこったから一枚じゃねえだろうとは思ったけどよ。」
「カマをかけられたか。これはしてやられたな。で?儂の虎の子を引っ張りだしてまで何をする気だ?」
「これだ。」
俺は、袂に入れてたモノを兵衛に向けて投げた。
「稼ぐのに元手が要る」
兵衛はそれをパシッと受けた。
兵衛の手の中には、2つのサイコロ。
兵衛は深い溜め息をつく。
「とうとう此処まで落ちぶれたか」
「?」
「博打というのはな。その場で朽ちるからバクチと言うのだ。賭博で活計など立てられぬわ!」
「黙って最後まで人の話を聞けよ。俺は遊興で賭けようってんじゃない。勝機があるから言ってンだ。
いくら俺でも、遊びにあんたの虎の子使ったりしねぇよ。」
「勝機だと?」
「説明するより見た方が早い。振ってみて。」
「振れと言われてもな。壺などないぞ。」
「湯呑みでいいよ。俺も湯呑みで試したから。」
「賽の目など判るものか。お前、天下三大不如意を知らんのか。」
「天下三大不如意?あぁ、賀茂川の水、双六の賽、山法師ってやつか。でも、俺は思い通りの目を出そうってわけじゃない。出た目を読もうとしてるだけだ。だから如意じゃなくていいんだよ。」
「そうか。」
「最初に上になる目だけ教えて。あとは転がる数と方向で検討つけるから。」
「わざわざ訪ねてきて何かと思えば。金の無心か。生憎だが、金など儂も持っておらんわ。」
「着物の襟に仕込んだ虎の子。どうせあんたの事だから使ってねぇんだろ?それを貸してよ。」
「何故知っておる⁉︎」
兵衛が驚く。
「前に着物に触った時に、硬かったから。なんか仕込んでると思った。大きさからして両判かな、と思ってさ。首の後ろ。左右の前襟と、あとは帯?四、五枚あんだろ?一枚貸してくれてもいいじゃん。」
「何処まで知っておるのだ…」
兵衛が明らかに警戒する。
「なんだ図星かよ。俺が知ってるのは首の後ろだけだよ。脱がした訳でもないのに、前襟やら帯の事なんか知らねぇよ。両判隠せるトコなんか限られるし、あんたのこったから一枚じゃねえだろうとは思ったけどよ。」
「カマをかけられたか。これはしてやられたな。で?儂の虎の子を引っ張りだしてまで何をする気だ?」
「これだ。」
俺は、袂に入れてたモノを兵衛に向けて投げた。
「稼ぐのに元手が要る」
兵衛はそれをパシッと受けた。
兵衛の手の中には、2つのサイコロ。
兵衛は深い溜め息をつく。
「とうとう此処まで落ちぶれたか」
「?」
「博打というのはな。その場で朽ちるからバクチと言うのだ。賭博で活計など立てられぬわ!」
「黙って最後まで人の話を聞けよ。俺は遊興で賭けようってんじゃない。勝機があるから言ってンだ。
いくら俺でも、遊びにあんたの虎の子使ったりしねぇよ。」
「勝機だと?」
「説明するより見た方が早い。振ってみて。」
「振れと言われてもな。壺などないぞ。」
「湯呑みでいいよ。俺も湯呑みで試したから。」
「賽の目など判るものか。お前、天下三大不如意を知らんのか。」
「天下三大不如意?あぁ、賀茂川の水、双六の賽、山法師ってやつか。でも、俺は思い通りの目を出そうってわけじゃない。出た目を読もうとしてるだけだ。だから如意じゃなくていいんだよ。」
「そうか。」
「最初に上になる目だけ教えて。あとは転がる数と方向で検討つけるから。」