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陽炎 ー第二夜ー
第3章 願わくば花の下にて
るいは団子を食べながら、ちらと鷺を盗み見る。
鷺は呆気に取られながらも、久しぶりに会う仲間に嬉しそうな顔をする。目が見えないから自覚がないのか、鷺は腹芸が出来ない。
感情がすぐ顔に出る。
そんな子供っぽいところも、るいは気に入っていた。

「お前らはどうしてるんだ?」

“ら”ということは、仲間がもう一人いて、この男と一緒にいるということか。

「元気だよ。私も昔の蓄えを食い潰す身だしね、もうすぐ養う人数も増えるし、かかりは少ないほうがいいだろ?」

「…ってことは、やっぱり?」

「うん。鷺の言った通りだった。もう、お腹も大きくなって来てるんだ。ちょっと動くのも分かるんだよ。夏前には生まれると思う。」

「良かったなぁ、おい!」

鷺は心底嬉しそうだ。
るいは複雑な心境だった。
目の前の、およそ男と思えぬ美人が父親ということなのだろう。

相手の女は嫌ではないのだろうか?
相手がどんな女か知らぬが、この人より美人などそうは居ないだろう。
私なら、自分より美しい男など嫌だけど。
しかも美しいだけでなく、女の格好をして、男に媚びを売って買い物をしているなど…

一緒に暮らしてもうすぐ三月が経とうというのに、鷺の過去はようとして知れない。
あの兵衛という男しかり、一体何仲間なのやら。
今日の再開にますます謎が深まるばかりだった。

団子を平らげたるいは、積もる話もあるだろうと席を外すことにした。

「あ、あたし、そろそろ仕事に行かなきゃ。仕込みまだ終わってないし。鷺はゆっくりしてきなよ。じゃ、お団子、ご馳走さま!」

るいは店から出て行った。


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