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弓月 舞 after story 集
第3章 もしも企画《 教師編 》第一弾
「待て、矢崎」
「……っ」
不意に呼び止められ、ドキリと柚子は立ち止まる。
正確には不意ではなかったかもしれない。呼び止められる気がしていたから、彼女は周囲にまぎれて帰りを急いでいたのだ。
「…は、…はい」
「お前は残れ、補講をする」
「ええ?」
振り返った柚子は理不尽な宣告に泡を食った。
「でもっ、今から終礼…」
「お前の担任には後から言っておく、気にするな」
「そんな…」
やっと帰れると思ったのに、またあの冷たい水の中に戻らないといけないなんて…
「きょ、今日しないと駄目ですか…?」
できることなら逃げ出したい。
「休み中も俺たち教師は仕事があるんだ。わざわざプールに来て教えるとか…そんな面倒なことをしていられない」
「…ぅ」
教師らしからぬこの言動で柚子を引き留めたのは、このクラスの保健体育を受け持つ市ノ瀬 匠。
整った顔とクールな印象で女子生徒からの人気はピカイチ。「いっちー」というあだ名で親しまれているが、本人はそういう馴れ馴れしさが嫌いなようで相手にしていない。
言わずもがな、柚子は何を考えているかわからないこの教師のことが苦手である。