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弓月 舞 after story 集
第3章 もしも企画《 教師編 》第一弾
「ハァ…ハァ…、三上、先生?」
「……」
柚子が練習しているレーンとは逆の場所に、水色Yシャツ姿の男がいた。
フェンスを背に、夏にも関わらず爽やかないでたちで立っている。
「茶髪か」
「いい加減にその呼び方はやめてほしいな。その言葉遣いも…教育者として駄目でしょう?」
「これでも校長には敬語だ。いちおう、あのジイさんは立ててやらないと不憫( フビン )だからな」
「……っ」
彼は柚子のクラスの担任、三上 翔だ。科目は世界史を受け持っている。
市ノ瀬と同様に女子生徒から人気なのは言うまでもないが、その真摯な対応のおかげで男女問わずから信頼を集めている。
柚子にとっても好きな先生のひとりだ。
「まぁ、その話は後でいい」
言い返したい気持ちをぐっと飲み込んで、三上は二人の方へ近付く。
「どうして俺の生徒が君と二人きりで残っているんだい?授業時間はとっくに過ぎているのに」
「…補講だ。クロールもできない矢崎のためだ」
「補講?…これが?」
プールサイドで睨み合う二人の教師を、柚子はどうすることもできず見詰めていた。
“ 市ノ瀬先生と三上先生が犬猿の仲だって噂は…嘘じゃないのかもしれない ”
そんな気がしてならない。