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恋花火***side story
第32章 非日常パラレルワールド
この後に及んで、向かったのは菜月の家。


見上げると、部屋にはまだ電気はついていなかった。


…全国大会も終わって、今はサッカー部も休息の時。


きっと陸先輩とデートでも楽しんでるんだろうと思った。


いつでも周りから愛される菜月。


それに比べ、誰からも愛されず


それどころか邪魔な存在でしかない俺が


菜月と一緒にいられるはずなんかないんだ。


…わかってるよ


わかってるんだけど…






菜月に会いたいと思う


顔も、身体も


全部好きだ。


話し方も、仕草も


辿ってきた道も


全部、全部…





















好きな奴が幸せならそれでいい


そんなセリフ


心から言ってる奴がいるなら会ってみたい


俺は自分の手で菜月を幸せにしたかった


だけど俺がいないほうが菜月は幸せなんだってわかった


















家を出ようと決めた。


ちょうどその頃、たまたまテレビでやってた神の手を持つドクターとかなんとかそういう番組で


外科の名医が特集されていた。


その病院は東京。


家を出るにも最高の言い訳を見つけた。


高校は辞める。


どっちみち制服もジャージもボロボロにされたし。


それにサッカーができないんじゃ今の高校にいる意味はない。


それに、ここを離れたい理由はもうひとつある。


菜月と離れたかったから。


やっぱりどうしたって好きで


目にするたびに辛いと思ったから。


十何年もそばにいたんだから、


その倍以上の時間をかけなきゃ忘れられそうもない。


守るべきものも何もない俺の決意は、簡単に固まった。
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