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恋花火***side story
第37章 あの頃この頃*Riku
タケルが東京に行く。


それを知って、菜月ちゃんは泣いた。











「……陸。」


もうあと僅かで今年も終わるという頃、通学で使う駅で、懐かしい香りに包まれた。


その香りは、簡単に時を二年前に戻す。


「…なにしてんの…ここで。」


問いかけると、艶やかな表情で笑いかけてくるその人は


_____エリカ。


あの頃、俺の全てを捧げた人。












「久しぶりだね。」

「…何回言うの、そのセリフ。」


駅のホームで立ち話。会って数分で、エリカは何度もそのセリフを口にした。


「サッカー続けてくれて、よかった。」


今日は部活も休みだったから、ジャージじゃないし、なぜわかったんだろう?不思議に思っていたら、「つけてくれてるんだね」と、エリカは俺の手首を指した。


俺の手首には、エリカがくれたミサンガがついている。


…と言っても、エリカがくれたものは長さも足りず、とてもじゃないが使用できる代物じゃなかった。それを見かねた茜が、ビーズやら何やらを付け足してくれて、まるで売り物のように生まれ変わった。


このブレスレットをつけていれば、試合で怪我をすることもなく、勝利も増えたから、ゲン担ぎとして愛用していた。


「…別にエリカがくれたやつだからって使ってるわけじゃないし。」


そんな事を言う俺に、エリカはわかってるよと言いたげに微笑んだ。その顔を見たら、今のセリフは余計だったなと思ってしまった。


「年が明けたら全国大会なんでしょ?すごいね。」


驚いた。まさかエリカが知っているとは思わなかったから。


「…なに驚いてるの?知らないとでも思ってた?」

「うん。」

「即答だね。」


だって、俺の知ってるエリカは、どちらかというとサッカーに興味がなかった。


「知ってるよ。全国大会のことも、キャプテン任されてることも。」

「…こわ。」


ストーカーかよ。言いかけてそれは飲み込んだ。


二年前、エリカは別れ際俺に言ったよね。ストーカーみたいって。


「なんか可笑しい?」

「いや…」


思い出し、思わず笑ってしまった。


あの頃エリカは俺に、大人になれと言った。


俺はあの頃より


大人になれているのかな…。



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