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恋花火***side story
第37章 あの頃この頃*Riku
……いや、大人になんかなってない。


俺から離れようとする菜月ちゃんを、意地でも阻止したいと思う。


もっと繫ぎとめたいと足掻けば足掻くほど、離れていく気がする…。


「…ねぇ、」


タケルがここからいなくなる今こそ、手に入れる絶好のチャンス。そう思ってしまう俺は、菜月ちゃんに相応しくない最低な_____


「ねぇってば。」


ふと我にかえると、すぐ目の前にエリカの顔があって驚いた。


「…陸、相変わらず可愛い顔してる。」

「なんだそれ。」

「言い方はキツくなったけど。…表情が柔らかくなった。」

「…そう?」

「彼女いるの?」


質問が唐突すぎて一瞬戸惑ったが、「いるよ」と答えた。


エリカの身体を傷つけておいて彼女だなんて…そう思ったが、目の前のエリカは、ふにゃっと優しく微笑む。


「…エリカこそ、表情柔らかくなったんじゃない?彼氏いるの?」


当然、いるよな。


エリカは二年前より、肌も髪も艶々になっていて、更に女ぶりが上がったように思う。前はうっかり触れたら傷が出来るくらいに棘があったが、今はそれを感じさせない。


「いないよ。」


返ってきた答えは予想外のものだった。


「嘘だろ。」


思わず否定してしまうが、そんな俺をエリカはクスクスと笑った。


「…好きな人はいるけど。」

「片想い?」

「まぁそんなところ。」


エリカが振り向かせられない男ってどんな奴だよ?


「まさかあの時の暴力男!?」

「んなわけないじゃん。」


それを聞きホッと胸を撫で下ろした。


エリカはあの時、顔にもたくさん痣が出来るほど殴られて痛々しかった。


あの時の光景は、今もふとした瞬間に思い出すことがある。


駅のホームにサラリーマンの姿がボチボチ増え始め、今は何時だっけと携帯を取り出した。


「…あ。」

「あ?」

「それ彼女?」


エリカに指摘され、しまったと思った。


俺の携帯の待ち受け画面は菜月ちゃん。


しかもツーショットとかじゃなくて、隠し撮りしたやつ…


言っとくけど隠し撮りって言っても如何わしいやつではないから!!
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