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恋花火***side story
第40章 初恋*Riku
そして迎えた、全国大会。
その日まで結局、タケルの消息を掴むことも、連絡を取ることさえも出来なかった。
全国大会はテレビで放映される。
あいつはどこかで、俺たちの姿を目にするはすだ。
それに僅かな可能性をかけて。
一縷の望みを託した。
全国大会は、準決勝まで駒を進めることが出来た。
それを勝ち抜けば決勝。
遂にここまでやって来たという、既に達成感を迎えそうなほどだ。
準決勝を明日に控えた夜。
俺は自室で、白い紙切れを手にしていた。
そこに並んでいる11桁の数字を目で追ってから、深呼吸をして。
順番に数字を指でなぞり、通話を押した。
5コール鳴った。
もし、10コールかけても出なければ、切る。
そう決めていた。
9コール目が鳴り終わる時、聞こえた声は、俺の右の鼓膜を震わせる。
「……どうしたの、電話だなんて。珍しいね」
「エリカ」
電話越しに聞くエリカの声。2年以上振りのその声は、簡単に時をあの頃へと戻すようだった。
「明日、準決勝なんだ。……全国大会の」
そう伝えるとエリカは、「知ってるよ」と電話の向こうで言った。
電話だから表情は見えないけれど、笑っているのが声と吐息から伝わってくる。
「……あの、あのさ」
「うん。なぁに?」
優しい声。
エリカはこんな声をしていたっけ。
「……俺がここまで頑張れたのは、エリカのお陰だよ」
謝る筈が、口から出たのは感謝の言葉。
謝罪も感謝も、同じ一文字が入るのは何故なんだろうとぼんやりと思いながら。
謝ってなに。
「ううん、私は何もしていないよ」
「いや。エリカはあの時、わざとだ。わざと冷たくした」
"あんたはサッカーのことだけ考えていればいいの"
痛いのはエリカなのに
馬鹿なことをした俺の背中を、どうして押したのかと、ずっと考えていた
「……エリカは俺を守ってくれたんだよね」
「違うよ」
声が震えてる。電話だから、それはより一層伝わる。
「あの時、突き放したように見せかけて……本当は……」
エリカは、守ってくれた。
その日まで結局、タケルの消息を掴むことも、連絡を取ることさえも出来なかった。
全国大会はテレビで放映される。
あいつはどこかで、俺たちの姿を目にするはすだ。
それに僅かな可能性をかけて。
一縷の望みを託した。
全国大会は、準決勝まで駒を進めることが出来た。
それを勝ち抜けば決勝。
遂にここまでやって来たという、既に達成感を迎えそうなほどだ。
準決勝を明日に控えた夜。
俺は自室で、白い紙切れを手にしていた。
そこに並んでいる11桁の数字を目で追ってから、深呼吸をして。
順番に数字を指でなぞり、通話を押した。
5コール鳴った。
もし、10コールかけても出なければ、切る。
そう決めていた。
9コール目が鳴り終わる時、聞こえた声は、俺の右の鼓膜を震わせる。
「……どうしたの、電話だなんて。珍しいね」
「エリカ」
電話越しに聞くエリカの声。2年以上振りのその声は、簡単に時をあの頃へと戻すようだった。
「明日、準決勝なんだ。……全国大会の」
そう伝えるとエリカは、「知ってるよ」と電話の向こうで言った。
電話だから表情は見えないけれど、笑っているのが声と吐息から伝わってくる。
「……あの、あのさ」
「うん。なぁに?」
優しい声。
エリカはこんな声をしていたっけ。
「……俺がここまで頑張れたのは、エリカのお陰だよ」
謝る筈が、口から出たのは感謝の言葉。
謝罪も感謝も、同じ一文字が入るのは何故なんだろうとぼんやりと思いながら。
謝ってなに。
「ううん、私は何もしていないよ」
「いや。エリカはあの時、わざとだ。わざと冷たくした」
"あんたはサッカーのことだけ考えていればいいの"
痛いのはエリカなのに
馬鹿なことをした俺の背中を、どうして押したのかと、ずっと考えていた
「……エリカは俺を守ってくれたんだよね」
「違うよ」
声が震えてる。電話だから、それはより一層伝わる。
「あの時、突き放したように見せかけて……本当は……」
エリカは、守ってくれた。