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恋花火***side story
第8章 プレゼント
「ちゃんと現実見ろ」


郁は俺の目を見てそう言った。


「今産んだとしても、おまえに養う力なんかない。」


ハッキリ告げられた。


「だけど16で働いてる奴だって…」

「そんな簡単なことじゃない。よく考えてみろよ。エリカだってもう一人男がいるんだし。今は感情的になってるだけだ。」

「じゃあ俺たちの時間はなんだったんだよ!?」

「…ほらな。これくらいで熱くなるだろ、おまえは。そんなんじゃやってけないっつってんだよ。」


郁の言うことは的確すぎて


なにも言い返せない。


「…じゃあ赤ちゃんは…」

「産まれてきても辛い思いをするだけ。わかりきってる。」


エリカは他に男がいた。


そいつの口ぶりからすると、俺はただ遊ばれただけらしい。


だけど


だけど、俺は


「…エリカと離れたくない」


子どもみたいに駄々をこねてしまう


エリカは本当に遊びだったの?


あの幸せな時間は、全て嘘だったの?


「人間は平気で人を裏切るからな。」





おまえ今どんな顔してるかわかってんのか


まるで泣きたいのを我慢している時の茜のような顔をして


「二人を愛することなんてありえない。そんなん恋愛ごっこだろ。」


それは父さんのことを言っているの?


それとも


エリカのこと?


そのあと郁は俺にたくさんの説教をした。


もういいよってくらい。


「知ってっか?こんな時痛いのは男でも女でもねーんだよ。」

「…じゃあ誰?」

「腹の赤ちゃんだ。」


ごめん


ごめんな


俺の大切な赤ちゃん


痛い思いをするためだけにこの世に舞い降りた天使


避妊もろくに出来ないくせに


目の前の欲望だけを満たしていた


「大人になれ」


早く大人になりたい


大切な人を守れるように


そんな男になりたい。

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