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文句言いっこなしの三重奏
第9章 休符
帰り道。
『痛ぃってぇ…』
『ッつ…おれだって…』
痛みに耐えきれず、互いに泣き出してしまったことを皮切りに。僕らの大喧嘩は、三分と持たず終わりを告げた。頭が冷えるにつれ、四年生にもなって泣いてしまった事実に、羞恥が込み上げ。さらには、気づけばたっぷりと浴びていた周囲の視線にも、その熱を掻き立てられて。決まり悪く目を合わせた僕達は、慌てて学校を飛び出した。
『あのさ…ごめんな、崇。』
『…おれも。ごめん、勇。』
仲直りはあっさりしたもので。互いの泣き止んだ顔を見て、なんだか笑けてしまった。
『…なぁ、ちょっと勇。アレって、ほのじゃないか?』
『あ?…あ、ほんとだ。おーい、ほのー!』
通学路にある神社。
ふと目をやったそこに、二人の女子児童の姿が見えた。
『ほの!良かった会えて。おれ達ほのを探してたんだ。こんなとこで、何して…』
『ぶっ…!何だよ崇、いきなり止まるなっ…』
石段に座り、
上体を折って伏せていたほのりの顔は
『た…崇くん…?…ひっく、勇…っ…』
涙に濡れていた。
(第9章 休符)