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文句言いっこなしの三重奏
第9章 休符
『あれ…いないな。』
崇臣と戻った校庭に、6人の姿はなかった。
『確かなのか?ここに居たって…』
『うん、さっきまで。でもランドセルもないし…もう帰ったのかもな。』
何気ない、僕の一言に。
崇臣は途端に瞳の色を変え、鋭く睨みつけてきた。
『オイ、何のんきなこと言ってんだよ?!勇が持ち場を離れたせいで、見失ったんじゃないか!』
『えっ…いや、そんな言い方しなくても…』
『どうすんだよっ?!今頃どっか、別の場所でイジメられてたら!』
喚き散らす崇臣なんか、見たことがなくて。だけど僕にも、言い分はあった。
『…あのなぁ。イジメイジメって、お前が勝手にそう思い込んでるだけだろ。実際僕は、この目で見たんだ。うんていで一緒に遊ぶ、ほのと佐伯を。イジメなんか、全然なかったん…』
『はあ?!ほのは、鉄棒もうんていも苦手だ!自分から遊びたいとか思うわけがないだろ!その時点でおかしいって、何で気づかないんだよ?!』
『──!…っんなの知るかよ!苦手だから尚更、練習してたんじゃないのかよ?!』
『くそ…っ!何にも分かってないな、バカ勇祐ッ!!』
『何だと?!お前こそ口だけなんだよ、バカ崇臣!!』
校庭に割れんばかりの声を張り上げて、互いに掴み合った。大して喧嘩らしい喧嘩をしてこなかった僕達も、この時ばかりはムシャクシャを抑えきれなかった。
………そうして。
二人揃って口の中を切ったのは、これが人生初のことだった。