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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
はじまりは、体育の授業だったという。
ある日、男女別にバスケのトーナメント戦が行なわれた時のこと。授業の冒頭で先生からチーム分けが発表され、佐伯とほのりは同じチームになった。続いて、先生は対戦表が書かれたホワイトボードを用意し、このトーナメントで勝ち上がる為に必要なものは何か、という質問を投げかけた。
「……それはズバリ、チームワークです。プレーの上手い下手よりも、チームとして一人一人が協力し合うこと。これが何より大切だということを、みなさん忘れないようにして下さい。」
話を聞き、察しの良い生徒は何人か気づいたと思うが…先生の割り振ったチームはどれも、佐伯のような運動の得意な児童と、ほのりのように苦手な児童をバランス良く組み込んだものだった。つまり、どのチームも力の差はあまり無く、努力次第で優勝が狙えるということだ。
「では、どのチームも一丸となって、優勝を目指しましょう!」
あくまで、生徒全員が参加できる授業であること。そして、互いに協力し合う姿勢を学ばせること。たぶんそれが、先生の意図だったのだろう。
しかし残念ながら…佐伯の所属するチームでは、その意図が汲み取られることはなかったらしい。