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文句言いっこなしの三重奏
第10章 クレッシェンド
「それじゃあ、うちのチームのルールを決めるわよ。まず、ボールは基本的に私達で回すこと。万が一、小鈴さんがボールを持ったらすぐにパスを出すこと。どうせカットされるから、下手なドリブルはしないでね。ああ、後…間違ってもシュートは打たないでよ?誰もあなたに期待なんてしてないんだから。せめて、私達の邪魔だけはしないように努力してくれる?」
当然のようにチームの指揮をとった佐伯は、試合前、そう言い放ったという。ほのりは萎縮し、他のチームメイトも反論できる者はいなかった。そして皮肉なことに、こんな戦略であれ、ある種のチームワークとして機能したのか…佐伯達のチームは決勝戦まで勝ち進んでいった。
『…決勝はね、いわゆるシーソーゲームだったの。点を獲ったら獲られての奪い合い。さすがの佐伯さんも苦戦してたけど…相変わらずほのりちゃんは、ボールに触らせてもらえなくて。』
ついに試合は最終セット。両者同点のまま、残り時間が一分を切った、その時だった。味方のパスミスで、偶然ほのりにボールが回ってきた。しかもほのりはノーマークで、たまたまゴールを狙える好位置に立っていた。