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文句言いっこなしの三重奏
第12章 ソナチネ


小5の春。


『おい勇〜、かーえろうぜ〜』

『ちょっと待ってー、これだけやってくー』


教室に迎えに来た崇臣に、テラスから手を振った。


『何、水やり当番?』

『うん、日直の仕事でさ…っと。よっし、これで終わりだ!』


クラス全員分の鉢に水をやり終え、じょうろに余った水を排水口へ流していると


『なーなー、何植えたんだー?』


窓辺の棚に頬杖をつき、崇臣が興味深そうに覗いてきた。その棚は腰ほどの高さがあって、奥行きもまあまあある頑丈な固定棚。そこにうつ伏せた崇臣は上体を乗せ、余った足をプラプラと宙に泳がせた。


『ひまわりだよ、崇のクラスは?』

『へー、今年はひまわりかぁ。ウチはまだ。来週の授業で蒔くのかな〜』


僕らの小学校では、入学と同時に一人一つの植木鉢を購入している。先生の指示で毎年いろんな草花を育て、夏休みには観察日記をつけたり、授業でスケッチをしたり。年間を通し、積極的に緑に触れる教育を受けている。



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