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文句言いっこなしの三重奏
第12章 ソナチネ


まだ茶色い土だけの植木鉢。種を蒔いたばかりだから当たり前だけど…早く緑の芽が出てくればいいのにと、気は逸る。


種を植えて毎回不思議なのが、ある日一斉に芽が出てくるあの瞬間だ。顔を見せたら、周りと競うようにぐんぐん伸びて、いつの間にやらぷっくり蕾をつけて。途中で折れたり枯れたり、病気になったりせず、無事に綺麗に咲く様。それを見届けるのが、僕は好きだった。


『で、ほのは?』


言いながら、教室をぐるっと見回した崇臣。
僕と同じクラスのほのりを探すも、姿はない。


『うん、今日も先に帰ったよ。』


去年くらいから、ほのりは仲のいい元木ユミコと下校することが増えていた。幼稚園から今まで、例えクラスが離れても、行きと帰りは常に一緒だった僕達も…この頃にはそれも稀になっていた。


『ふ〜んそっか、そっか。』


軽快な返事と共に、棚に座り込んでいた崇臣が飛び降りた。そして、席で荷物を片す僕に向かって、何やら待ちきれない顔をして近づいてきた。



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