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文句言いっこなしの三重奏
第3章 前奏曲
『…原先輩!』
全体のミーティングも終わり。片付けを終えた部員達が、道場から部室へ、次々と移動していく中。僕は、後ろ姿の先輩を呼び止めた。
『あの、今日はすみませんでした。僕のせいで、みんなに迷惑をかけてしまって…』
本当は、一番謝らないといけないのは団体戦のメンバーだけど。帰り際、『気にするな』と岡田先輩の方から声をかけられ、続けて他のメンバーからも同じ言葉を受け…かえって謝罪らしい謝罪ができなかった。
『…岡田くん、道場を出る前、英くんに何て声をかけて行ったの?』
『え、あ、ええっと…、今日のことは気にしなくていいからって。こういう日は、さっさと寝るに限るから…』
ここで、詰まる。
いや、ホント。この先は、女子に言うような台詞じゃなかった…。
『「限るから」…?』
『いや、えっと…と、「とにかく早く寝ろ」って…』
…簡略。
危ない危ない。礼儀作法に厳しい弓道部の中でも、取り分け厳しいのが原先輩だ。変な言葉遣いでも平気で渡り合ってるのなんて、部内でも主将の岡田先輩だけ。普通の部員が礼儀を欠けば、どんなお説教が待っているか分かったもんじゃない。