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文句言いっこなしの三重奏
第4章 アレグロ コン フォーコ
『………いつまでやってんだよ。』
乾いた声が宙に浮く。
それは、蚊帳の外からの憤り。
バッと顔を上げた瞬間、崇臣は俯いた。わざと、僕を避けたみたいに。
『…さっさと済ましてよ。つーか、おれ何か腹減ってきたわ。』
ため息混じりの声には、さっきまでの覇気が感じられない。怒っているのか、それとも呆れているのか…下を向く表情からは、何も読み取れはしなくて。僕は黙って、出方を伺った。
それが気に入らなかったのか…気怠げに頭を掻いた崇臣は、ほのりの後ろから抜け出し、ベッドから降りた。そのまま無言で部屋を突っ切り…扉に手をかけた所で、僕は慌てて声を張った。
『ちょ…何してんだよ、崇臣!』
まさか、出て行く気じゃないよな…?!
全く反応を見せない態度に、妙な不安を覚えて。思わず叫ぶと、やっと振り返る。
『何?でかい声出して。』
『お前、どこ行く気だよ。』
『下だけど。』
『は?何で…』
『だから。腹減ったって、いま言ったじゃん。』
やけに落ち着き払った様子の崇臣は。
顔を見ても、感情が読めない。
『何言っ…』
『…昨日の借りだし、あとは好きにヤれば。』
淡白に。それだけ告げると、崇臣はさっさと出て行ってしまった。
(第4章 アレグロ コン フォーコ)