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文句言いっこなしの三重奏
第5章 二重奏
タンタンタン…
迷いなく階下へ消えた足音。
戻ってくるつもりはないんだろうか。
『行っちゃったね…
崇くん、ちょっと怒ってた…?』
『さあ…』
どうなんだろう。
確かに、さっき完全にアウェーだった崇臣が苛立つのは当たり前のことだけど。…でも、そもそもほのりを取り合ってるんだ。嫉妬くらいする。毎度、お互いに。それがいくら募ったからって、途中でセックスを放棄だなんて…今まで一度もなかったのに。
『お腹そんなに空いてたのかなぁ…?』
隣に座り直したほのりは、そっとブラウスで胸を隠した。立てていた膝もベッドにつけ、スカートの裾を気にしている。
『さあ、ね……』
本当に空腹だった可能性はあるけど。
でも、たぶん…
「昨日の借りだし」
あんな風に捨て台詞を吐くくらいだから、気を利かせたってのが実の所だろう。…というか、付き合いきれないって方が近いのか。
改札で言ってたように、今日は崇臣自身がセックスをする感じではなかった。ここまでずっと僕をサポートするばかりだったし。一応あいつなりに、昨日のことを気にしてたって…そういうことかな。