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キセイジジツ
第11章 外出
しばらく入口の方を見つめながら悠里は立ちすくんでいた。
それは悠真も築地も同じで、それぞれが何かを考えながら黙っていた。
ーーーこれで良かったよね?
入口横にある窓から外を見るといつの間にかほの暗くなっていて、結構な時間が経ったのだと気づく。
あんなに近くにいた健が今は離れていき、気持ちに応える事が出来ないのは自分なのに、健が身を引いた事を少し寂しく感じていた。
ーーー今さら寂しいって思うなんて。
いつの間にこんな自己中になったのかな…
ため息を吐いているとポンッと肩を叩かれた。
振り返ると悠真が腰に手をあてて眉を下げている。
「少し寂しくなった?」
「うん…これで良かったよね?」
「これが最善だったと信じるしかないよ。誰も傷つかないなんて無理なんだし」
「そうだよね…」
私がうつむいていると築地が割って入った。
「悠真くんの言う通り!悠里ちゃんはいつか健との事を良い思い出って言えるようになるくらい、幸せになればいいんだよ。じゃないと健が身を引いた意味がなくなるからね」
「はい」
「ちなみに、俺もフリーだけどどう?」
「あ…築地さんもいい人なんですけど…」
「ははっ。悠里ちゃん真面目だな~冗談だよ。俺は友達と同じ子を好きにはなれない派だからさ。
それに健が最後に言った言葉、俺も同意見だよ」
築地が大きく口を開けて笑う。
「健を悪く言う訳じゃねーけど、恭介は真面目で誠実だしホントいい奴だよ」
「そうですね。長田さんと知り合って間もないですけど、いい人だなって雰囲気で分かります」
「だろー?へへっ」
まるで自分が誉められたように築地は嬉しそうだ。
「あいつとはさ~中1からつるんでるんだけど、あの容姿だろ?健と同じくらいモテるんだよ。なのに誰とも付き合おうとしなくてさ」
「一度もですか?」
「俺が知る限りでは一度もないね。すげー可愛い子とかから告られてんのにさあ…俺の気持ちにもなってみろよってんだ」
先ほどとは反対で次は眉を寄せている。
嫌な思い出でもあるのだろうか。
「ははは…俺の個人的な妬みは置いといて…
宝の持ち腐れとはあいつの事だね。だから恋愛に対してはどんな風になるか分かんないんだ。もしかしたらすげー奥手かも…
だからさ、悠里ちゃん。
恭介の本能を引きずり出してやってよ」
築地は穏やかに微笑んでいた。