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キセイジジツ
第12章 作戦

「あぁ~間に合わないよぉ~!!」

パソコンとにらみ合い、指を器用に動かしていく。


ここ何週間かすごく忙しくて固定休である日曜日までも返上して仕事をしていた。

仕事の内容としては…録音された音声をパソコンを使って文字にしていく"文字起こし"というものを主に、新作映画やドラマなどについて視聴者へと紹介する文章を考える"ライター"というのも定期的に請け負っている。

仕事量の割に手取りは少ないのが現実だが、文章を考えたりパソコンを使うのが好きな自分にはピッタリな仕事だと思った。

当然それでは食べて行く事も出来ず、実家暮らしをしながら恋人に生活費を工面してもらっている。


「手伝おうか?」

コーヒーを淹れて部屋に戻ってきた元がパソコンを覗き込む。

「ううん、大丈夫。もう少しで終わるはずだから…」

そう言いながらも自分でも本当に終わるのか分からず、うなだれながらレコーダーを再生させる。

聞き取れた音声をすぐにパソコンに打ち込んでは再生させて、という動作をひたすら繰り返すのだ。

そんな作業が約一時間ほど経った頃、首筋にヌルッとした感触を感じた。

「ひえっ!」

変な声を出してバッと振り返ると元の顔があり、無言のままキスをされた。

「ん…」

思わず声を出すと元は唇を離した。

よく見ると不機嫌そうな顔をしている。

「まだ?いつまで待てばいいの?」
「あと…もう少し…かな?」

目を泳がせながら答えると元がニヤッと笑う。

「あと何分?」
「うーん…あと10分…いや、15分くらい?」
「分かった。本当に手伝わなくていーの?」
「うん、自分の仕事だから自分でやりたいの」
「15分待つから頑張って」

そう言うと元もパソコンへと向かう。

元はシステムエンジニアの仕事をしていてパソコンの操作に関しては美咲よりも数倍長けている。

それでも美咲の仕事を下に見る事はないし「頑張ってる美咲が好き」と言ってくれるから、どんなに大変でも頑張れる。

そっと元の横顔に向けて「ごめんね」とつぶやき、再びパソコンへと向かった。


そして13分後ーー

「お…終わったあぁぁー!」

本社へのメール送信を終わらせて椅子の背もたれに寄っかかりながら腕を伸ばしていると、元にヒョイッと抱き上げられた。

「お疲れ。待ちくたびれたよ」

ベットに落とされるのは慣れっこです。
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