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キセイジジツ
第15章 距離

沈黙が続いていた。

律は少しうつむき、悠里と真人は律を見つめている。


ーーー私はどうしたいのかな…。


覚えてないけど、昔はお兄ちゃんのそばをチョロチョロしてたってお母さんが言ってた。

嘘でしょ、と信じようとしない私にお母さんが写真を見せてくれると確かにお兄ちゃんにしがみつく自分の姿が写っていた。

たぶん3歳頃。

お兄ちゃんは9歳頃で、小学生のくせにすでに顔が整っていて微笑みながら隣にいる私の頭に手を乗せていた。


私とお兄ちゃんは父親が違う。

お兄ちゃんのお父さんと離婚したお母さんが、今のお父さんと再婚して産まれたのが私。

父親は違うけど母親は同じだから、お兄ちゃんと血の繋がりはあるし顔も似てる方だとは思う。

でもお兄ちゃんは成長するにつれて注目されるようになって、どちらかといえば普通な私はお兄ちゃんと比べられるたびに劣等感を感じていた。

こんな事、親友の悠里と悠真にも話した事ない。


お兄ちゃんを避けるようになったのは……

嫌がらせをされるのが嫌になったのもあるけど、お兄ちゃんのそばにいて比べられるのが嫌という気持ちの方が大きかったから、かもしれない。


それなのにーーー

嫌がらせが…実は愛情の裏返し?みたいな事を言われても困る。

けど…本当か確かめてみたい気持ちもある。

今までは確かめようなんて考えもしなかったけど、真人さんに言われると“確めた方がいい“という気持ちになるのが不思議。

ちらっと真人さんを見ると、ん?と首をかしげられてドキッとした。

えっ、何でドキッとしてんの、私!

思わず目を逸らすと、いつの間にか悠里がいなかった。

ちょ、悠里どこ行ったー!?

目線を泳がせていると真人さんが顔を覗き込んでくる。


「悠里ならコーヒー淹れてくるって。りっちゃんコーヒーで良かったよね?」
「は、はいっ」


うわわわ…顔近いって…

と、とりあえず、深呼吸!

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「どう?気持ちは固まった?」

タイミング良く真人さんが尋ねてくれた。

「はい…、確かめてみたいです」

「うん、それがいいよ。俺もりっちゃんと旋には仲良くしてて欲しいし。りっちゃんは逃げなくて偉いね」

真人さんが穏やかに笑い、大きな手が私の頭に触れた。
よく分かんないけど…顔が熱い。
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