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第9章 彼の家族

「なっ…そんなっ事、した、こ、となっ…」

「うん。じゃあ、今日からしようか。はい、口開けて？」

へっ…！？
く、口開けるヤツですかっ！？
相変わらず楽しそうに笑っている一ノ瀬さんが癪に障る。

「きょっ、今日はもうしたから終わりですっ！」

若干、自棄になりながらそう言って一ノ瀬さんの腕の中から逃れようともがく。
そんな私の抵抗は無意味で、びくともしないその腕は、簡単に私を閉じ込めてしまう。

「ホントに知花ちゃんはかわいいな。」

「うっ、嬉しくないっです！おっ、おやすみなさい！」

三度目のふて寝決行。

「ふふっ、おやすみ。身体、ガチガチだけど…ククッ、寝れるの？」

「さっ、３秒で眠れますっ！！」

「あっはっはっ！何それ。知花ちゃん面白すぎて、俺、寝らんない。」

結局、そんな会話がずっと続いて、眠りについたのは明け方頃。
朝ごはんは小さなお餅が入ったお雑煮で簡単に済ませて、お昼は豪華なおせち料理を頂いた。
午後からは一ノ瀬さんと二人で近くの神社まで初詣に行って、手を繋いで歩きながらいろいろな話をした。

一ノ瀬さんの家族とお別れをして、一ノ瀬さんのマンションに帰って来たのが16時半。
冷蔵庫に残っていた食材で晩ごはんを作って食べて、また映画を観た。
鑑賞中はまたしてもアノ座り方で、後ろから一ノ瀬さんの腕が回されている。
時々、ぎゅっと腕に力を入れたり、髪の毛を触ったり、肩に頭を預けてきたり、一ノ瀬さんが私の反応を楽しんでいた。