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この出会いは…
第9章 彼の家族
「あぁ、もうっ。また俺を暴走させたいの?」

「そっ、そんなつもりは…」

「うん、ないよね。分かってる。」

私の言葉を遮って、腕の力を強める。

「でも今のは、誘ってるとか、煽ってるとか取られてもおかしくないからね?一般論として。」

「え、あの…」

「無自覚天然発言が多くて…ククッ、試されてる気分。」

そう笑って話す一ノ瀬さんは、少し前の真剣な口調の時とは大違いだ。
一つ確かなのは、今は私をからかい始めたという事。

悔しい。

下唇を噛んで一ノ瀬さんを見上げるように睨む。
でも、一ノ瀬さんには全く効かなくて『その顔もダメ』と笑って鼻を摘ままれた。

「ねっ、寝ますっ!」

これは、もう絶対ふて寝しかない。
抱き締められているから、背を向けられないのが不本意だけど、一ノ瀬さんの腕の中で目を瞑って『おやすみなさい』と会話の強制終了をした。

「ふーん。先に寝ちゃうんだ?」

なっ、何ですと!?
まだ、からかって笑うつもりなんですかっ?
返事をしないで寝たフリを決め込んだ私をクスリと笑う。

ちゅっ

突然、唇に柔らかくて温かいモノが触れる。
なっ、キ、キスしたっ!?
思わず目を開けてしまって、視線を捉えられる。

「あ、起きてたの?」

「いっ、ちのせっ、さ…」

飄々と言われた言葉に、声も出してしまった。

「おやすみのキスしないで寝ちゃうんだもん。」
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