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この出会いは…
第10章 乗り越えたいモノ
「今日はもう寝ようか。」

ハッとして一ノ瀬さんを見ると、いつもと変わらず優しく微笑んでいた。
その顔を見たら、あっという間に視界が滲んで来てしまった。

「怖かった?ごめんね。もうしないから。」

優しい笑顔が申し訳なさそうに歪む。

「違っ…!ごめっ、なさぃ…私…」

違うんですっ!
ちゃんと説明したいのに、身体の震えが邪魔をして、上手く説明出来ない。
なんて言ったらいいのかも分からない。

「知花ちゃん。震えが止まるまで、こうしててもいい?」

一ノ瀬さんが再び私の後ろに寝転んで、抱き締めてくれた。

「いっ、ちのせ…さっ、ごめんなさ…」

「謝らなくていいよ。知花ちゃんは悪くないんだから。」

優しく抱き締めてくれている腕の中で向きを変えて、一ノ瀬さんと向きあって、私から抱き付いた。

「違うんですっ。私、一ノ瀬さんが怖いんじゃっ、ない、んです。ごめんなさっ、私…どうして…」

「うん、大丈夫。分かってるから、落ち着いて?」

「一ノ瀬さん…。ぎゅってして、下さっ、ぃ…」

「うん。」

さっきよりも力を込めて抱き締められて、身体が密着して、一ノ瀬さんの鼓動が聞こえた。
トクントクンという規則正しい音を聞いていると、身体の震えは収まってきた。
ほらね、やっぱり怖くない。
なのに――…

「落ち着いてきた?服、着なきゃね。待ってて。」

一ノ瀬さんが腕をほどいて、起き上がろうとしたので、より強く抱き付いた。
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