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この出会いは…
第10章 乗り越えたいモノ
「でも、やっぱりそれじゃダメだって…」

息が苦しい…

「さっ、最後の最後は…その…、何を言っても、抵抗しても…受け入れてっ、もらえなかった…のでっ…。はぁ…はぁっ…」

「知花ちゃんっ?もういいよ、話さなくて。」

「いえ…一ノ瀬さん、聞いて…くれますか…?」

「…分かった。でも、無理しないで。」

私をぎゅっと抱き締め直して、頭を撫でてくれた。

「その…、さっ、最後は…人形の様に…感情を捨てて、ピクリとも動かず、息を押し殺して…ました。」

一ノ瀬さんの腕の中で、何回か深呼吸をして冷静を保つ。
その間、一ノ瀬さんは、再び背中をトントンしたり、擦ったりしてくれた。
無言だけど、温かさが伝わってきた。

「呼吸も心臓も音を立てないでって…。死んだ…と、思ったら…もう何もっ、されなくて済む、そう思って…。いっそ…このままっ、ホントに…そうっ、してくれって…」

そこまで言って、一ノ瀬さんの身体が固まった。

「私は、あの時…そんな風にっ、思っていた、んです。でもっ…」

顔を上げて、一ノ瀬さんを見上げた。
目が合った一ノ瀬さんは、ものすごく悲しくて、辛そうな顔をしていた。

「でもっ、一ノ瀬さんは、いつも…気遣ってくれて、私の事を…ちゃんと見てくれているって分かります。一ノ瀬さんに触られて…嫌だ、とは思いません。」

私は一ノ瀬さんにそんな顔をして欲しくないの。
いつもの様に優しく微笑んで欲しい。

「知花ちゃん…」

「大事に…思ってくれているのが、伝わってきますし、そう思われている事も、今、一ノ瀬さんに触れている事も…私はっ、嬉しいし、幸せなんです。」
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