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この出会いは…
第10章 乗り越えたいモノ
「いっ、ひゃいっ!!」

「知花ちゃん、あのね。その無自覚天然発言、止めてくれる?俺、さっき頑張って堪えたんだから。」

つねられたままの頬がじんじんする。

「さっき我慢した分、今したら加減が出来ないの。余裕がなくて、知花ちゃんが嫌がっても止めれる自信がない。」

パッと頬をつねる手が離れて、ペチッと軽く両頬を叩かれた。

「分かった?」

「我慢、してたんですか…?」

「…そりゃ、ね。」

「がっ、我慢…しないで?って、言ったら、どうします…?」

頬を包む手がピクッと反応したのが分かる。

「がっ、まん、させてるのがっ、嫌って…言ったら…?」

「…何言ってるか、分かってる?」

「一ノ瀬さんが私に遠慮して、本音を隠してるなら…それが、一番やっ…です…」

「俺、加減が出来ないって言ったよ?」

「いっ、一ノ瀬さんなら…平気っ、です!」

頬に触れる手に力がこもる。

「……本気?」

鼻が触れる距離で見つめる一ノ瀬さんの顔が、"男の人"に変わった。

「じょ、冗談でこんな事っ、言いませんっ!わっ、私は一ノ瀬さんに、応えたいんですっ!」

私の言葉を聞くなり、一ノ瀬さんは起き上がって、私の身体を跨いだ。
顔の隣に両手を付き、視線を合わせてくる。

「水族館、キャンセルになるけど、いい?」

「…えっ?」

「たぶん、出掛けるの辛いだろうから。」

「…ど、ういう事…でっ」

「しょうがないよね?煽ったのは知花ちゃんなんだから。覚悟してね?」

私の問いかけに答えずに、右の口角を上げて怪しく笑う。
その姿に背筋がゾクゾクした。
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