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自己負担。
第9章 逃げられない思い
自分の心を封じ込めた後は、
もう涙すら出なかった。
お互い無言のまま先輩に手を引かれて歩く。
そうだ…ついこの前までアキと帰った道。
こんな風に手を繋いだりしなかったけど、彼はいつもわたしの隣で笑ってた。
アキの笑顔を思い出したら自然と頬が緩んだ。
「大丈夫だよ。
戻っておいで…」
「…うん…
大丈夫。」
大丈夫。そう自分に言い聞かせる。
アキ、
これで良いんだよね?
いや、これで良いんだ。それでアキが好きな人と一緒に居られるなら。
それならわたしの居場所はここしかない。
「……付き合います、先輩と」
先輩は振り向かずに黙って頷いた。
諦めよう。
そうだ、また前の生活に戻るだけ。
前よりもっと大事にしてもらえるかもしれない。大丈夫。忘れられる。
また先輩を好きになればいいんだから。
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