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戦国ラブドール
第14章 海の向こうに
「さあ、どこからだったかな。でも毎日騒いでたものが、ある日を境にぱったり悪事が途絶えたから、町じゃちょっと話題になったみたいだよ。親玉が下手こいて捕まったか、内部で何かあったかしたんじゃない?」
「そうか、町で……」
やけに神妙な顔で聞き入る佐吉に、吉継は冷めた目を向ける。最近こそこそしている原因は何か、はっきりと分かったのだ。
「佐吉も嘘やごまかしは大抵下手だよね。人の事言えないよ」
「俺は、別に何もしていないぞ! 妙な勘ぐりはよせ」
「ああ、策謀に溢れる乱世が怖い。ま、別に何もしてないならいいけど」
吉継がこれ以上追及しない事に、佐吉は安堵し胸を撫で下ろす。そんな様子は見ない振りをして、吉継は再び碁盤に目を向けた。
だが、吉継は佐吉の隠し事の重大さを、真に見極められてはいなかった。ここで追及していれば、紅天狗との争いは変化を迎えていたかもしれない。だが現実は、吉継も大海も何も知らないままひたりひたりと近付いている。
ぱたりとなりを潜めた紅天狗は、綻びを見計らい飛び出そうとしていた。