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戦国ラブドール
第27章 未来への道に
呑気に人の心配をしている吉継に、大海は溜め息を漏らす。
「しばらくお別れだってのに、雰囲気もなにもあったもんじゃないね」
「だって、しんみりする必要ないでしょ? 僕は死ぬ気なんかこれっぽっちもないし、帰る時は君が待ってる。武功を立てれば出世も出来て、これほど幸せな事ってないじゃない」
吉継の頭の中には、戦死の危険も会えない寂しさもないらしい。前向きな姿を見ていると、大海は立派な心構えで送り出さなければと気を張っていた自分が馬鹿らしく思えてきた。
「そんなに雰囲気って言うなら、君にしか出来ない励まししてよ。お見送りの口吸い」
吉継は唇を指差すと、大海に迫る。呆れを通り越して笑いのこみ上げてきた大海は、吉継の頬に手を添えて口付けた。
触れる唇に、大海は二人が胸の奥まで一つなのだと実感する。悲しみや寂しさより、明るい見送りの方が自分達らしいのだと、心で通じ合った気がした。
「ん――いってらっしゃい」
「行ってきます」
乱世は、若い二人を巻き込みまだまだ続く。しかし固く結ばれた絆は、荒波を乗り越え未来への道を、自らの足で進む力である。二人の明日に昇るのは、希望の朝日であった。